大蛇伝説にちなんだ祭典を毎年8月下旬に開催しています。
大沼池の大蛇と黒姫の物語
これは昔から志賀高原一帯に伝わる話です。
大沼池に棲む大蛇は志賀高原の守り神でしたが、嫁はいませんでした。ある春、いつものように見るからに立派な若者に姿を変えた大蛇は中野東山の花見に詣で、一人のとても美しい女性と出会いました。
この女性は時の中野の最高権力者である、小館城の殿様高梨摂津の守政盛の娘、黒姫でした。二人は互いに惹かれあい、恋をしました。しばらくの交際の後、若者は「私は大沼池の主で、志賀高原の守り神の大蛇です。私にあなたの娘の黒姫を下さい。」と願い出ましたが、殿様は「人間でもないものにどうして娘をやれるものか」と言下に断りました。しかし若者はあきらめず毎日毎日城を訪れお願いしました。
根負けしたのか、殿様は「わしの乗った馬の後をついて城の周りを七周できたら姫をやろう」という条件を出しました。若者は喜んでこれをのみましたが、これは罠でした。殿様は城の周りに刀を逆さにして植え、その上で大蛇を走らせ、殺そうとしたのでした。
その日がきて若者は殿様の後をついて走り出しましたが、殿様は馬の名手、追いつけなくなった若者は大蛇の姿に戻り後を追ったからたまりません。大蛇の体は逆植えの刀に裂かれ、傷つき血は流れ、恐ろしいありさまになりながらも、約束どおりに七周をまわりました。殿様の計略どおり大蛇は倒れ、起き上がってきませんでした。
しかし、やがて息を吹き返し起き上がってあたりを見回した時、誰もいないのに気づいた大蛇は、殿様が約束を破ったのを知りました。怒りに震え志賀高原に戻った大蛇は、一族郎党の手を借りて雨雲を呼び、暴風雨を起こし、さらに志賀高原中の池を決壊させて大水で小館城を流そうとしました。
中野の村に大洪水が起こり、人も動物も飲み込まれ、田畑は流され中野一帯は壊滅状態になったのでした。中野の東山が盾になって濁流から難を逃れた小館城から、すっかり流されてしまった城下をみて悲しんだ黒姫は、事態を収束しようと決意し、ひとり大沼池に身を投げました。
それを知った大蛇はそれまでおこしていた雲を散らし、洪水を止め大沼池に戻っていったのでした。
この大蛇は現在も志賀高原の大沼池に守り神として祀られています。また、毎年八月に大蛇祭りが行われています。ここに祀られている大蛇はその時に使用されるものです。